バーチャル世界で再発見する、日本の“たてもの”の魅力

「日本の美」を次世代に伝え、未来へとつなげる「美と文化の祭典」日本博。令和3年度は映像・VR・画像を通じて、自宅から閲覧・体験できる「バーチャル日本博」をオープンしました。
今回は多彩なジャンルの中から、「日本の建築」をピックアップ!日本の建築物が今注目されている理由は?バーチャル世界での展示の楽しみ方とは?日本博事務局の建築ブースの担当者にお話を伺いました。

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日本の「たてもの」への関心は「サステナブル」から?

日本の技EXPO~文化財を守る自然の素材と匠の技術

日本の「たてもの」に今注目が集まっているのには、どういう理由があると思いますか?

海外からの旅行客の増加やSNSの発達から、日本の風景が外国の方の目に留まる機会が増えたことが関係していると思います。日本人にとっては当たり前の風景ですが、海外のSNSなどで取り上げられることによって、国内でも改めて注目されるようになったのではと思います。

また、世界的に今、「サステナビリティ」というテーマが注目されていますが、日本の建築は、まさに“サステナブル”な存在だと言えます。多くの日本の建築は木材を中心とした自然素材からできており、決して強固なものではありません。しかし、それらの素材を大切にし、修理し、長く活用していく文化こそ、日本建築の大きな魅力であり、注目される要因のひとつなのではないでしょうか。

V&Aダンディー(英国)2018©Ross Fraser McLean

今年開催された東京オリンピックも、日本の建築が注目されたきっかけとなったのではないでしょうか

そうですね。国立競技場のデザインに携わった隈研吾氏は、自然との調和を意識した建築家として海外でも有名です。同氏が建築家を志したきっかけは、1964年東京オリンピック開催時に、丹下健三氏が設計した国立代々木競技場を目にしたことだと言われています。今年の東京オリンピック開催も、建築への関心が高まる一つの機会になったのではないかと思います。

近年、相次いで安藤忠雄氏の展覧会が開催されたことや、2020年12月に「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録が決定したことも相乗効果となって、この数年は日本建築への注目が高まったように感じています。

「匠の技」から知る日本の美と、未来への課題

木組展おうちでミュージアム(竹中大工道具館)

さまざまな日本の美を取りそろえているバーチャル日本博ですが、「建築」を軸に他ジャンルへ視野を広げようとする場合、どういう順番で鑑賞するのがおすすめでしょうか?

まずは木組みのコンテンツから見て回るのはいかがでしょうか。「組子細工の技を継ぐ」では、繊細で緻密なデザインを産む、組子細工の高い加工精度を感じることができます。隣にある「木組みの家」は、伝統的な木組みの手法と大工道具で家を建てるドキュメンタリーです。この2点を起点に、「日本の技EXPO~文化財を守る自然素材と巧みの技術~」の映像や「日本のたてもの」のVRに飛ぶとより理解が深まるかと思います。また、ここから興味を広げて、「工藝2020」(N6)のページを見ていただくのもおすすめです。

また、映像コンテンツ「伝統建築工匠の技」から鑑賞していくのもよいかと思います。補強・修繕を軸に、建物から障壁画や彫刻、さらに絵画等といった美術工芸品へと関心の幅を広げ、他の展覧会や美術館等のブースも見ていただきたいです。「伝統建築工匠の技」では、文化財を保護するための伝統的な技(選定保存技術)の一部をご覧いただけます。同時に、それらの技術が後継者不足により継承が危ぶまれている、といった今後の課題についても考えさせられるテーマだと思います。

仮想現実だからこそ見えるもの

バーチャルで鑑賞するメリットとは何でしょうか。

動画を簡単に見られるという点は大きなメリットだと思います。押せばすぐに本編が始まりますし、動画以外も、概要欄からすぐにその事業や展覧会の公式サイトに遷移できるようになっています。見ているものへの興味を途切れさせずに、そのコンテンツを掘り下げることができるという点は、この「バーチャル日本博」最大のメリットだと思います。

たとえば、「日本のたてもの」展(東京国立博物館)では、文化庁が「模造事業」としてこれまで製作を行ってきた1/10スケール(一部を除く)の国宝・重要文化財の木造建造物の模型が一堂に会しました。細部まで精巧に再現した建築技術を本物よりも間近に、また、屋根の上からなど、普通とは違った角度から鑑賞できるのがいいですね。大仙院本堂模型や東福寺三門模型などは、断面という特に珍しい角度からアプローチできます。VRは奥行きやスケール感を味わいやすいという点で、この建築というジャンルにより向いている鑑賞方法なのではないかと思います。

沖縄県立博物館・美術館所蔵

「日本のたてもの」展では東京国立博物館会場バーチャル第2会場にある首里城正殿模型もご覧ください。2019年10月に発生した首里城の火災は、保管・管理体制について考えさせられた出来事でした。ここでは、第二次世界大戦の戦災で焼失する前の首里城正殿の模型と、2019年の火災前に撮影された首里城の写真が展示されています。この模型は、戦後の首里城解体修理に参加した知念朝栄氏が、焼失する前の記録や記憶を頼りに昭和28年に製作したもので、模型や写真が、単に鑑賞としてではなく、修復する際の事前調査等にも役立っている一例かと思いますし、「今見られないものを見ることができる」というバーチャルのメリットも感じられます。

令和3年度のバーチャル日本博は、こうした動画やVRなどを各事業において積極的に制作、発信していきたいと思っています。

「バーチャル日本博」は新たな「好き」との出会いの場として

これからバーチャル日本博を訪れる人にメッセージをお願いします

来ていただいたきっかけから、もう一歩興味関心の幅を広げて、より面白いものに出会っていただければと思います。「建築」だけでもさまざまな側面があります。神社仏閣が好きなら「日本のたてもの」VRを楽しんでもらいたいですし、建築家に興味のある方は、隈研吾展や丹下健三展といった展覧会ブースも今後拡充していく予定ですのでご期待ください。今興味があることを入り口として、この先新たに琴線に触れるものに出会ってもらえると嬉しいです。

また、今はまだ難しいですが、いずれは外に出て現地に足を運んでいただきたいです。建築以外の、芸能や美術・文化財でもよいかと思います。そのきかっけやモチベーションにつながればうれしく思います。
このバーチャル日本博を足がかりに、好きだと思えるものが増え、いっそう人生が豊かに広がっていくことを願っています。

ありがとうございました。
普段テレビやSNSでの鑑賞や観光で何気なく目にする日本の建築は、どれも先人たちとその技術を継承してきたたくさんの「匠」がつないできた美しい日本の文化だということを、改めて意識する機会になりました。今回のお話とバーチャル日本博での鑑賞をきっかけに現地を訪問したいです。また、実際に足を運ぶ前の予習として活用すれば、よりいっそう有意義な鑑賞の旅になるかもしれませんね。

バーチャル日本博

日本博では、実際の会場での「リアル体験」と、デジタルコンテンツによる仮想空間をオンライン上に設置した「バーチャル体験」の融合を目指し、国内外へ発信していく「バーチャル日本博」をオープンしました。
美術展、舞台芸術、自然、芸術祭など、日本博事業が表現する様々な「日本の美」を、美しい映像、VR、画像等を通じてバーチャルの世界で体験することができます。

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